インタビュー

【建築家インタビュー】建築家とはどんな仕事なのか

建築家の仕事に興味がある方はいらっしゃいますか?
マイホームの購入を検討されている方や、学生さんで建築の仕事に興味がある方でも、建築家とは具体的にどんな仕事なのか、よく分からないという方もいらっしゃると思います。

そこで今回は、いつも仲良くさせていただいている建築家、Miu建築工房のMiu(みう)さんに、建築家の仕事についてインタビューをさせていただきました。

 

目次

1.建築家とはどんな仕事なのか

2.建築家の仕事の進め方について

3.設計事例のご紹介

4.おわりに

 

それではいってみましょう。

 

1.建築家とはどんな仕事なのか

建築家とはどんな仕事なのか

―――Miuさん、本日はよろしくお願いいたします。
Miu :よろしくお願いいたします。

 

―――早速ですが、建築家の仕事内容はどのようなものか教えてもらえますか?

Miu :私の場合は約2年前に事務所を設立したのですが、主に住宅の設計・監理・リフォーム、あとはインテリア・家具のコーディネートやデザインを行っています。

また、これまで一般建築(住宅以外の公共建築や施設物)の設計もやってきておりますので、その設計・監理、あとはインテリアデザインとか家具についてもやらせていただいております。

 

―――住宅から施設建築まで幅広いのですね。
設計の仕事で心がけていることはなんでしょうか?

Miu :これまで一般建築を主にやってってきていた中で、住宅もいつかは手掛けてみたいとずっと思ってきていまして、住宅っていうのはすごく生活に密着した視点でみれるものなので、すごく深みがあって面白みを感じるので、それで住宅の方もやり始めているわけです。

そもそも建築を建てるにあたって一般建築であっても住宅であってもクライアントの希望や思いに寄り添うことが一番大事なんじゃないかなと思っていまして、それを心がけながら設計させていただいております。

 

―――事務所を設立する前はどんな建物を手掛けられてきましたか?

Miu :設計事務所に所属していて、そこが主に教育施設・福祉施設を多く設計している事務所だったので、公共建築や施設物が多かったです。

 

―――ということは、構造でいうと木造というよりは、RC(鉄筋コンクリート)や鉄骨造が多かったのでしょうか?

Miu :そうですね。そっちの方が多かったですね。住宅をいつかはやりたいなあと思っていたので住宅の方もやれるような環境にしていきました。

 

―――住宅の構造は色々あると思いますが、今まで一般建築でRC造や鉄骨造が多かったと思いますが、住宅の設計もRC造が多いのでしょうか?

Miu :これまでやった住宅は全部木造でした。
やはりコストを考えると木造が一番パフォーマンス的には優れています。

また、住まいという視点で考えた時に「木」があるという自然素材による効果はとても大きいと思っています。特にこの日本の風土に木造は合っていると思いますので温熱環境もそうですけれども、住宅はできるだけ木造や木質仕上げを基調につくっていきたいなと思っています。

 

―――RC造や鉄骨造を設計していたころとは違い、最近では木のぬくもりを生かした住宅が多くなっているのですね。

Miu:そうですね。自分の生活の中での結婚・出産・育児・家事っていう経験を経て、やはり住まいとか生活に密着したものに対するこだわりがよく分かってきているので、そういう意味でも住宅の方に面白みを感じていたりもします。

 

建築家とはどんな仕事なのか

 

―――設計で得意なところや心掛けているところはありますでしょうか?

Miu:自分の得意なことは、「女性目線でプランを見れる」ということと、もう一つは自然環境をうまく建築の中に取り込んで、四季が感じられるような空間や間取りとか「光を感じれる」そういったものをお客様に提案していきたいなと思っているので、そのあたりが心がけていることの一つだと思います。

 

―――今まで設計事務所で勤務されていたとのことでしたが、2年間に独立されたということですね。独立のきっかけはなんだったのでしょうか?

Miu:結婚・出産は大きいですね。
仕事をしながら親として子どもに対する責任を果たせるのか、と考えたら絶対果たさないと思ったので、そこはもうやめるしかないなっていう、ノーチョイスでした。

 

―――会社に勤めながら(設計事務所で)小さい子を育てるのは大変ですか?

Miu:それはすごいヘビーですよ。でも、そこを可能な社会にしていかなければならないって言うのが大前提だと思います。事務所を辞めて人が変わってしまうと、それまでの経緯を知っている人間がいなくなるってことに等しくなります。そこで両方の責任(仕事と子育て)が果たせないことは、私が事務所に勤めていた時代には認められにくかったんです。
今は逆に、私の後輩たちは両立できている人もいるので、それは会社が変えていったし、社会が変わっていってくれたということだと思います。

 

 

2.建築家の仕事の進め方について

建築家とはどんな仕事なのか

―――建築家の仕事の進め方を教えてもらえますか?

Miu:はい。「十余二の平屋」というプロジェクトがありましたので、それをサンプルにしながら仕事をどのように進めているかというのをお話しをさせていただきます。

 

―――ありがとうございます。まず、お客様(施主)とのファーストコンタクトはどのように取られるのでしょうか?

 

Miu:そのお客様はまず当社のWebサイトを見てコンタクトを取ってくださいました。
https://miu-archi.com/
話を聞いてもらえませんか?ということで、実際にお会いして色々ヒアリングさせていただきました。その中で「このような土地を買いました」だったり、「こういう家を建てたいな」と、持っているイメージをできるだけたくさん伝えていただきました。

それを私が意識しながらプランニングをするわけです。プランニングを約2週間くらいかけてさせていただいて、次回お客様にお会いした時に、コンセプトシートという、設計プランをまとめたシートをお渡しします。

 

―――コンセプトシートはどのようなものでしょうか?

Miu:このようなもの(下記画像)で、この時のお客様には2つのプランを提案させていただきました。

建築家とはどんな仕事なのか

そのお客様は「平屋が建てたい!」と平屋に興味がおありだったので、そこの話を詳しくお聞きしました。
すると、昔から平屋に憧れを持っていて、フロアの移動することなく生活の全てがワンフロアで完結するという生活スタイルに憧れを持っていたとのことです。
そこで一度現地の状況を見させていただきたところ、敷地の大きさや周辺環境を見て、この敷地に平屋は建てられるということが確認できましたので、平屋の案を提案させていただきました。
念のため平屋建てではない2階建ての案も作り、平屋案と2階建て案の2つのプランをつくらせていただきました。

建築家とはどんな仕事なのか

また、設計プランの横にコンセプトを文字で記入し、お客様にプラン内容が伝わるようにしています。
平面的なプランのみだとイメージが伝わりにくいので、プランの中にどういう意図があるのかということを、言葉で説明したものになります。

これらをコンセプトシートとして1回目の提案とさせていただきました。

 

―――素晴らしい提案書ですね!色使いもとてもきれいですが、何のソフトを使って作られるのでしょうか?

Miu:平面図・文字・色付けを、全てJW CADというCADソフトで作っています。

 

―――それではコンセプトシートを提案した後は、どのように設計を進めていくのでしょうか?

Miu:コンセプトシートを見ていただいて、このプランの通り建てなければならないということではないので、まずは私の意図を汲んだプランをどう思うか、この内容を見て私に家づくりをお願いしたいかどうか、というのを検討・判断していただいて「これでお願いしたいです」ということになりましたら契約をして基本設計に入っていくという形をとっています。このときのお客様は、私のプランを気に入ってくださったので基本設計に進ませていただきました。

 

―――基本設計とはどういったものになるのでしょうか?

Miu:コンセプトシートのプランを下書きにしながら、動線(人の動き)や収納の整理、水回りの計画などの、基本的なところのプランニングをしていくというのが基本設計です。このお客様の場合は、駐車場の位置を最終的に変更することになりました。このような基本的なプランをまとめることを目的として、2~3か月の期間内で、5~6回程度の打ち合わせに分けて行っていきます。

基本設計が終わった段階で、「基本設計説明書」というものを作らせていただいて、1つの節目としています。

 

―――ちょうどよい頻度で打合せが進んでいくのですね。
「基本設計説明書」とはどういったものになるのでしょうか?

Miu:まずは、建築敷地の概要、そして建築自体の概要、計画の説明、また地盤調査も行いますのでその検討結果をのせます。建築家とはどんな仕事なのかまた、基本設計説明書の最後に、模型を作ったりパースを書いたりしたものを出来上がりのイメージとして共有させていただきます。

そして「打ち合わせ済みの平面図をプランはこれでいきますよ」というものをまとめて、「立面や断面についてもこういう計画で進めます」ということで、この段階でほとんどの法的整理を終えて、仕上げ材も大まかなものは決まっている状態まで記入し、最終確認をさせていただくものが「基本設計説明書」になります。

基本設計説明書は図面については JW CADでまとめていまして、それ以外の資料はExcelを使って作成しました。

この先は、この「基本設計説明書」をもとに実施設計に入っていきます。

 

 

―――なるほど。このような説明書がこの段階で作ってもらえると家づくりの気持ちが高まりますね。
設計業務のスケジュール感的には、改めてどういった形になるのでしょうか?

Miu:ファーストコンタクトを経て、2週間でまずコンセプトシート作成します。
設計依頼の意思確認をし、ご依頼いただければ基本的な設計契約となります。

2~3ヶ月かけて基本設計にはいります。役所の事前協議や周辺敷地をもう一度改めて見直して、光の入り方や窓の高さの取り方とかを確認しながら基本設計をまとめています。この期間で、お客様と大体2週間に1回くらいのペースで打ち合わせをさせていただきました。

 

―――お客様とは2週間に1回くらいのペースなんですね。

Miu:これぐらいのペースで進めれば理想的だと思います。それ以上伸びすぎてもスピード感にかけてきますし、それ以上早まっても物が早急に決まりすぎて、後戻りすることも出てきそうなメージがあるので、それぐらいのペースで進められれば順調にいっていると思います。

 

―――お客様へのプレゼン方法はどのようにされるのでしょうか?

Miu:私の使っているJW CADというソフトは2次元の図面を書くためのソフトです。ですので、手書きのパースと模型を作って、それをお客様に見せて3次元のイメージを共有させていただいています。

模型については、基本設計が終わった段階あたりで、一度模型を作ってボリューム感を共有し、さらにパースも書いてそこに着色したりして外観のイメージ(外からの見え方)を共有してもらうということをしています。

ここまでお客様とイメージを共有して、そこから実施設計の図面をスタートさせます。

 

―――かなり綿密にお客様とイメージの共有をするのですね。
パースをどのように書いているのか教えていただいてもいいでしょうか?

Miu:模型を作ったときに、例えば前面道路から見た建物のイメージや、人の目の高さ(アイレベル)からの見え方がどうなるのかっていうのは、模型を作ることで実際に近い形で見えてくるので、そこで何枚か模型の写真をアイレベルで撮り、その写真を下図にしてパースを作成します。そうするとパースガイドがなくても、ある程度ボリューム感が正しいスケールでパースを表現できるので、私はそういうやり方でパースを書いています。建築家とはどんな仕事なのか

―――そのようにパースを書くと、早く正確に書けるのですね。
1つの建築プロジェクトの期間でどの作業が一番多いのでしょうか?

Miu:実施設計を自分で書いているので、1つの建築プロジェクトの設計期間だけをとらえると、基本設計前半では鉛筆を持ってプランを考えている時間が多く、その後それをCAD化していって実施設計を行うのですが、その段階になるとひたすらJW CADで図面を書いている状態になっていきます。これが社員の方や図面を書いてくださるパートさんとかがいれば少し違った動きになっていくと思いますが、私の場合は自分で最初から最後までやるようにしています。

―――前半部分はプランを考える時間、後半部分ではCAD作業が多いのですね。
ここまでお話しをうかがって、建築家の仕事の仕方がよく見えてきました。

3.設計事例のご紹介(十余二の平屋)

直近のプロジェクト例としてお話していただきました「十余二の平屋」ですが、先日私も実際にオープンハウス(竣工時の見学会)に行かせていただきました。

女性目線で計画したと言われていたように、キッチンに立った時にご家族の気配が感じられ、中庭を中心に回廊式のつくりになっていたので家の中に光がたくさん入り、仕上げの木のぬくもりも感じられる、そんな自然をたくさん使った設計プランにされているのが印象的でした。
平屋の概念が変わり、ぜひ住んでみたい!と思う住宅でした。
(平屋ですが、ロフトを設ける事で、空間を上下にずらすという工夫もされていました)

建築家とはどんな仕事なのか(Photo 中村 絵)

建築家とはどんな仕事なのか(Photo 中村 絵)

建築家とはどんな仕事なのか(Photo 中村 絵)

写真の続きはこちら(Miu建築工房「十余二の平屋」)
https://miu-archi.com/project/toyofuta-flats/

 

4.おわりに

いかがでしたでしょうか。
今回は「建築家とはどんな仕事なのか」という内容で、Miu建築工房のMiu(みう)さんにインタビューをさせていただきました。

次回は建築家のBIM・3D CADの使い方についてインタビューさせていただきます。
もう少し実務寄りの話を伺いますので、興味ある方は見てみてください。

―――Miuさん、本日はどうもありがとうございました。
Miu:ありがとうございました。

✅Miu建築工房
https://miu-archi.com/